ビッグスクーターの塗装

■ インナー塗装について

インナー(ビックスクータの内装部品、ステップ部品など写真1〜7)は、普通のカウル物やタンクなどの違いブツブツ(シボ)があり平らにするのが大変手間が掛かります。 また、密着が悪く、正直言ってあまり塗装には適してはいません。だからといって「完全に密着しない」「直ぐに剥がれる」というわけでもありません。
プライマーという液体を塗装することにより密着がある程度はよくなります。
(走行中に剥がれるという事はありません)
インナーの塗装は、他のバイクのプラスティックのカウルや鉄のタンクの塗装と違い手間が大変掛かるという事だけはご理解下さい。(タンクやカウルも手間が掛かりますがそれより手間が掛かります)

まず、ブツブツ(シボ)ですが、こちらはサフェーサー(下地に塗る塗料)を重ねて塗装し、平らになるまで研磨(サンドペーパーで研ぐ)すればぶつぶつが無くなります。また、密着の悪さは、プラスティックプライマーという液体を塗装 (散布?) すればある程度の密着は良くなると思います。
ただ他の塗装物よりは若干密着は悪いのでご理解下さい。
※簡単には剥がれたりすることはありません。

インナー塗装写真1〜7
インナーの塗装についてこれから順をおって説明をしていきたいと思います。


■ 汚れを落とす

まず、インナーが汚れていたりすると(特に脂分)、塗料がうまく塗装できないのできちんと汚れを落とします。
・ホコリや泥などは洗剤で綺麗に洗えば落ちると思います。
・油分(オイルなど)の場合、洗剤等でも綺麗になりますが、時間が掛かるので、塗料セットについているシンナーで洗浄をしてください。
洗浄の仕方ですが、少しの油分でしたらウエスなどにシンナーを浸み込ませてふき取れば綺麗に落ちます。
頑固な油分でしたら、ハケなどにシンナーをつけて直接洗い流してください。
この方法で綺麗に落ちると思います。

■ パテその@

良く洗い落としたら、インナー部分を見回して、キズがないか見ます。新品だと問題ないのですが、長年使用している物の場合、走行中にこすったり、ぶつけたりしていて、傷などがありますのでパテで直していきます。また、ブツブツですがこの時、平らにしようとするとインナーの場合、特殊なプラスティックのため裂けたような傷になり、治すのが大変になりますので、サフェーサーを塗装してから直していきます 。

■ プライマー塗装

インナーが綺麗になりましたら、よく乾燥させて、プライマーを塗装していきます。プライマーとは(写真8)、インナーと塗料の間に塗装することで密着が良くなる液体です。簡単に言うと密着剤みたいな物です。
プライマーをまず計量ポリカップに必要な分だけ入れます。(写真9
プライマーは普通の塗料と違い、硬化剤、シンナーは必要ありません。そのままスプレーガンに入れて塗装します。(写真10
プライマーの塗装方法ですが、塗料のようにきちんと塗装するのではなく、軽く全体に散布?する感じで塗装してください。(写真11〜13
液体が軽く付着すれば密着します。あまり塗りこみ過ぎると垂れて淵に溜まり、乾燥が遅くなってしまい乾かないで塗装すると塗料の色が変色する可能性がありますし、もちろん密着にも影響があります。
スプレーガンの調整の仕方は、上の調節ネジは全開で(写真14)、真ん中の調節ネジも全開にしてください(写真15)。一番下の調節ネジは、細かいところは圧を小さくするため絞り気味にし(写真16)、全体を塗装するときは全開にして塗装してください。

プライマーは30分もしたら乾燥するので(写真17)、サフェーサーの塗装をします。

※     気温20度の目安なので、気温が低い場合はもう少し時間を置いてください。
プライマー塗装写真8〜17

■ サフェーサー塗装

サフェーサーの配合方法ですが、弊社のサフェーサーと硬化剤の比率は4対1になります。
サフェーサー400グラムの場合、硬化剤100グラムになります。
今回は計量ポリカップ500CCで作っていきたいと思います。
計量ポリカップにサフェーサーを400のラインまで入れます。
入れたら、硬化剤を100cc入れます。500ccのラインまで入れてください。
シンナーですが、気温によって量が変わるので、あくまで参考と考えてください。(今回は気温20度の場合)シンナーの量の目安としては主剤(サフェーサー)に対して2割くらいですが、気温が低いとシンナーが少なくなりますし、気温が高いとシンナーの量は増えます。
必ず、よく混ぜて、ダンボールなどに試し塗りをして塗装してください。
試し塗りの状態ですが、淵にサフェーサーが溜まる、艶がかなりあり薄い感じがする場合はシンナーが多いです。
逆に、塗料の粒子が粗くざらつく、又、スプレーガンから塗料の出が悪い場合はシンナーが少ない可能性があるのでシンナーを追加してください。

サフェーサーの塗装ですが、スプレーガンのカップにコシ紙を先に入れて(写真18→19→20)良く混ぜたサフェーサーをスプレーガンのカップに入れ、用意をします。
ガンの調整は、プライマーと同じ調整方法で良いです。
※ガンの調整の仕方は、上の調節ネジは全開で(写真21)、真ん中の調節ネジも全開にしてください(写真22)。
一番下の調節ネジは、細かいところは圧を小さくするため絞り気味にし(写真23)、全体を塗装するときは全開にして塗装してください。
サフェーサー塗装写真18〜23

まず細かいところを塗装していきます(写真24)。
その後全体を塗装してください。(写真25→26→27→28

サフェーサー塗装写真24〜28

最初に全体を塗装して、細かいところを塗装しても良いのですが、全体を塗装している時に、細かいところまで塗り込むと細かいところにある程度ムラが発生して、その後に細かいところを塗装するとサフェーサーが垂れ易くなります。(経験上)

また、インナー部品は平面ではないので、きちんと塗るためにも、平面塗装後、吊るして塗装することをお勧めします(写真29・30)。その方が全体をムラ無く塗装できます。サフェーサー塗装写真29〜30

サフェーサー塗装後、気温20度の場合、4時間くらいで乾燥します。
※ 時間を置けばおくほど固まりますが、あまり置いて置くとサフェーサーが硬くなり研ぐのが大変になりますし、密着不良の原因にもなります。

乾燥後、良く塗装面を見てください。傷などがある場合、パテをもう1度付けて乾燥後、研いで平らにします。また、ブツブツのシボが目立つようならその部分もパテ埋めをしたほうが、簡単に平らになります。(パテを研ぐのは大変ですが・・・・)

サフェーサーの研ぎの順番ですが、まず、細かいところから#320〜#500番程度のサンドペーパーで研いでいきます(写真31・32・33)。細かいところを最初に研ぐのは、最後の方に研ぐと飽きてきていい加減になってしまいます(経験談)。細かいところもきちんと研がないと後で密着不良で塗装が剥げてきます。
また、細かい手の入らないところは、このような(写真34・35)ペーパーで研ぐと、きちんと傷をつけることができるので便利です。
細かいところをきちんと研いだら、全体を研いで下さい(写真36・37)。
平面を研ぐときは、当て木などを使って(写真38・39)研いだほうがいいと思います。
手で直接、平らな所を研ぐ場合、どうしても指先などが柔らかくて、平らに研いでいるつもりでも歪んでしまい、きちんと平滑になりません。もしこのまま上塗りを塗装するとあまり歪んでいる場合、塗装面も歪んでしまいあまり綺麗に見えません。
また、細かいところは当て木を使わなくても歪みが目立たないので、そのまま手で研いでも問題ありません。研磨後(研いだ後)、雑巾等で水拭きし、汚れをふき取ってください。

この工程で下地は完了ですが、パテが大きく露出している場合は、その部分をサフェーサーで塗装して隠してください。直接パテの上に塗料を塗装するとパテ跡が出る場合があります。乾燥後はサンドペーパーで研いで下さい。
サフェーサー塗装写真31〜39

■ 色の塗装

今回は、シルバーでの塗装になりますが、キャンディー色や、ソリットカラー(黒、白、赤など)は、スプレーガンの動かし方や塗り方が多少変わるので詳しくは弊社の塗料についている「塗装マニュアル」を見ながら塗装してください。
まず、計量ポリカップにシルバーの塗料を入れます。そこに硬化剤、薄め液を入れてよく混ぜてください。
配合ですが弊社の塗料と硬化剤の割合は8:1になります。
シルバーの塗料100CCの場合、硬化剤15cc入れてください。シンナーですが季節によって代わりますが気温20度の場合、主剤(シルバーの塗料)に対して6割程度でいいと思います。※色によっても若干量が変わります。
スプレーガンの調整の仕方は、上の調節ネジ(塗装の範囲の調整)は中くらいで(写真40)、真ん中の調節ネジ(塗料の出る量)は少し締め気味(1周程度)にしてください(写真41)。一番下の調節ネジは(空気圧の調整)、細かいところは圧を低くして、絞り気味にし(写真42)、全体を塗装する時は、圧を上げて塗装をしてください。
色の塗装写真40〜42

塗装する前に、きちんと汚れやホコリを落としてください。(写真43・44
色の塗装写真43〜44

ホコリなどを取り除いたら塗装していきます。(写真45→46→47→48→49
色の塗装写真45〜49

この様に置いて塗装する場合、裏側が塗装できないので今度は吊るして塗装していきます(写真50→51)。
また、この時、きちんと見渡し、塗れていない所があればきちんと塗装してください。
細かくて塗装しづらい部分などは一番下の調節ネジを締めて圧を弱くして塗装するとうまく塗装できます。
写真52・53
色の塗装写真50〜53

※  一回で塗装すると塗料が垂れやすいので、軽く色をつける感じで塗装して(捨て吹き)、5分ほど置きもう1度塗装すると垂れずにうまく綺麗に塗装できると思います。もし薄い場合はこの工程を繰り返すといいと思います。
全体がきちんと色が付き、ムラ等無ければ色の塗装は完了になります。
今回のようなシルバー、パールコートは、成分の関係上、艶が無いのでクリアーを塗装して艶を出します。また、ソリット、キャンディーカラー、クリアーなどの場合は慣れてくれば回数を減らしても塗装できます。

■ クリアーの塗装

色を塗装して、乾燥したら、クリアーを塗装していきます。
※ 乾燥時間ですが、ソリットの場合1時間もしたらクリアーを塗装しても問題ないのですが、下塗りのシルバーやパールの場合、直にクリアーを塗装すると綺麗に並んだパールやシルバーが完全に乾いていないので、クリアーを塗装したとき動いてしまい。 ムラのような仕上がりになりますので気温20度の場合、4時間程度は置いていた方が安全です。
(キャンディーの場合も下塗りがシルバーの場合が多いので、同じように時間を置いてからカラークリアーを塗装してください。)

クリアーの配合は、塗料と同じになります。
計量ポリカップにクリアーの塗料を入れます。そこに硬化剤、薄め液を入れてよく混ぜてください。
配合ですが弊社の塗料と硬化剤の割合は8:1になります。
気温20度の場合、主剤(クリアー)に対して薄め液6割程度でいいと思います。※気温によって薄め液の量が変わります。

スプレーガンの調整の仕方は、上の調節ネジは全開で(写真54)、真ん中の調節ネジも全開にしてください(写真55)。一番下の調節ネジは、細かいところは圧を低くして勢いを殺すため絞り気味にし(写真56)、全体を塗装するときは全開にして塗装してください。
クリアーの塗装写真54〜56

塗装する前に、やはりきちんと汚れやホコリを落としてください。
ホコリなどを取り除いたら塗装していきます。
この様に塗装する場合、裏側が塗装できないので今度は吊るして塗装していきます。
また、この時、きちんと見渡し、塗れていない所があればきちんと塗装してください。
細かくて塗装しづらい部分などは一番下の調節ネジを締めて圧を弱くして塗装するとうまく塗装できます。
クリアーの塗装は基本的にはソリッドカラーやカラークリアーの塗装と同じと考えてください。
ただし、1回の塗装で仕上げてください。時間を置いて回数を重ねて塗装すると速乾性の塗料のためザラザラになりやすく綺麗な仕上がりになりません。
クリアーは艶を出すために塗装しますので、1回で艶を出して塗装してください。

この工程で仕上がりになりますが、きちんと平面が歪んでいなく、綺麗な鏡面を出す場合、クリアー乾燥後(気温20度で4時間)、
サンドペーパーで研いで(#800番〜)、平らにしてください。(写真57・58・59・60・61
この時、角を注意して研いで下さい。(写真62)のように研ぐと、簡単に削れてしまい色がはげてしまいます。
角などはなるべくサット研ぐようにして(写真63)のように研いで下さい。
全体を満遍なく研いだら、雑巾などできちんと隅々まで拭いて水気を取り乾かして下さい。
乾いた時の状況ですが、白っぽく、よく見ると細かい傷がついていますが、クリアーを塗装すると消えて艶が出ますので安心してください。
クリアーの塗装写真57〜63

研磨後雑巾等でふき取り、塗装物を乾燥させ、エアーブロー等でゴミホコリを取り、クリアーを塗装すると綺麗な鏡面の仕上がりになります。(写真64・65・66
クリアーの塗装写真64〜66

もし艶があまり無い場合は、もう1度同じ工程を繰り返すか(研いでクリアーを塗装する)、#2000番で研いで、コンパウンドで磨くと綺麗になると思います。
※ コンパウンドの手順などは弊社ホームページに掲載しているので、見てください 。>>CLICK